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2012年5月

リチャード P. ファインマン: ご冗談でしょう、ファインマンさん

物理学徒たるもの必読の一冊と聞いてはいたのだが、なんとなく読みそびれて30代のおっさんになってしまった。
が、これではいかんとようやく図書館で借りてきた。
ファインマン先生が幼少の頃から研究生活へと入るまでに起きた、様々な事件を面白おかしく語ってくださる科学エッセイ。

いやー、これは面白い本だった。軽妙かつユーモアたっぷりの書きっぷりと、その裏に確かに横たわる凄まじいまでの洞察力と知識。他の人が書くと単なるイヤミになるようなことも、すっきりと感じさせてくれる。
上巻のメインはやはり、マンハッタン計画に従事していたときの「下から見たロスアラモス」だろう。この中で書かれる、軍による手紙の検閲とそれをからかう暗号作りなどは、アメリカと日本に共通する当時の「軍というもののおかしさ」を描いてみせてくれている。

下巻で面白いのは、日本滞在記と言える「ディラック方程式を解いて頂きたいのですが(Would you solve the Dirac equation?)」。無理を言って日本旅館に宿を変えてもらい大興奮し、そこの風呂で湯川教授に会うくだりなどとても面白い。

その他にも、興味あるエピソードがいっぱい。
*タイトルの「ご冗談でしょう(Surely you're joking)」は、プリンストン大学でのイギリス式社交辞令の文句らしい。つまり何かへまをした時、そこでは怒られるのではなく、こうたしなめられるのだ。
*メタプラスト社でのプラスチックめっき。こんな仕事もしてたんだ。
*コンピュータをいじるものがかかる「コンピュータ病」。目的そっちのけで、自動的にarctan(x)を計算する方法に夢中になってしまう。
*プリンストンでのゼミに、パウリ・アインシュタイン・ノイマンなど大御所がずらりと来ると聞いて青くなるシーンが印象的。自信満々に見えるけど、そういうこともあったんだなー。
*アリの通り道の研究。アリがエサを見つけた帰り道を色鉛筆で辿ると、最初はガクガクだったのが徐々に「省略」されてまっすぐになっていく。なるほどなー。紙のフェリーに乗せてアリを運ぶなど、アリの行列への探求は実に素直で興味深い。
*「Physical Review誌に載る記事には全部目を通していた」という記述がさらりとあるのにはビビった。当時と今では投稿数も段違いだろうけど、それにしてもPhys. Rev.を全部読むとは……。
*教育について、ブラジルの大学教育の駄目な所をはっきりと指摘したり、アメリカの小学校教科書を辛辣に批判したりと、実に真剣。相手が誰であろうと、ダメだと思うところははっきりと言う。上巻でも、大御所ボーアに対して「考えがお粗末ならお粗末と言う」というくだりがある。
*芸術家に科学とテクノロジーを教えよう、という章も面白かった。これは今の日本でもやるといいと思うなあ。
*「ファインマン物理学」の冒頭になぜドラムを叩くファインマンの姿が載っているかが書いてある。長年の謎が解けた。単に、振動の節などを書くために太鼓の写真が良いのではというのが誤解して伝わったそうな。

ということで、大変面白い本でした。
ただ、マンハッタン計画で原爆を作り上げたことに対して、あまりにさらりとしすぎなのだけがちょっと不満だったかな。そこはもう少し掘り下げて考えて欲しかったなあ。(☆☆☆☆☆)


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森見登美彦: 美女と竹林 (光文社文庫)

竹林にまつわるエッセイ……なのか? 妄想短編私小説集。
職場の先輩である鍵屋さん宅の竹林にて、竹を刈るために右往左往する森見登美彦氏。彼の行動をひたすら語り続ける、人を食ったようなアホらしい話が延々と続き、これがたいそう面白い。

大学時代にゼミで「竹の子が来た!」と言われるくだりはゲラゲラ笑った。また、MBC最高経営責任者の大ホラ吹きも面白い。この人は本当に奇才だなぁ。竹林そばのステーキハウスなど、なんでもない舞台を何故か印象の残るものにしてしまう力がある。(☆☆☆☆)

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玉井哲雄: ソフトウェア社会のゆくえ

ソフトウェアと社会の関わりについて、ソフトウェアへの専門知識を持たない人向けに書かれた本。

うーん、この本はなんだかやたらと回りくどい書き方で、途中で飽きちゃって放り投げてしまった。
「ソフトウェア」という言葉の起源を調べた辺りは面白かったけど、ジェイコム株の話はここまで細かく書かれてもなあ。もっと、人月の神話的な話が聞きたかったな。

ちなみにこの本では、ubuntuのことを全て「ウンブトゥ」と表記していて、腰が抜けるほどびびった。初版だからただのtypoなのか……? でも、そうならこの校正やった人ははっきり言ってダメすぎだよなあ。
ビル・ゲイツのことも頑なに「ビル・ゲーツ」と書いているし、何か謎のこだわりがあるのかもしれない。(☆☆)

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沢木耕太郎: 旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)

実はまだ「深夜特急」を読んだことが無いのだが、図書館で目に付いたので借りてきた。
旅への思いを語ったエッセイという感じでなかなか面白かったけど、これは確かに先に「深夜特急」を読んでおくべきだな。

しかし、どうやってライターになったか、どうして旅に出ることになったか、辺りを読んでいると、「うーむ、ラッキーな人だなぁ」とちょっと羨ましく思ってしまう部分も多かった。(☆☆☆☆)

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ナンシー・リカ・シフ: 世にも奇妙な職業案内

様々な職業の人々を撮影したポートレート集。犬の散歩屋、足モデル、犯罪現場フォトグラファー、女装学校校長など、対象とする仕事は様々。
全ての写真はモノクロスクエアで、どれも雰囲気が素晴らしい。面白かったのはホットドッガー(ホットドッグの宣伝車)かな。こんなのあるの、知らなかったわー。(☆☆☆☆)

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沖田 ×華: ニトロちゃん

いわゆる「問題児」ニトロちゃんの、小学校と中学校での過酷な学校生活を描くエッセイ漫画。
内容はとてもダークでドロドロしているのだが、それを筆者の軽いタッチとノリで描いてくれて、重いテーマも意外にすらすらと読むことができる。

私はここまでヒドい先生に当たったことは無いのだが、「なぜ怒られてるのか」分からないのに先生がすごいキレてる……ってのはよくあったなあ。そういう時は、どうすればいいのか全く分からないよね。
読後感になんだかスッキリしない、ちょっとホラー物を読んでしまったかのような居心地の悪さを感じてしまった。教員志望の学生さんなどには、ぜひ読んで欲しい一冊。(☆☆☆☆)

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アンデルセン: 絵のない絵本 (岩波文庫)

古典ということで読もう読もうと思っていたけど、やっと図書館で借りてきた。絵描きの若者へ語られる、お月様からのお話。
どれも短編よりもっと短い、掌編という感じ。あちこちの夜の風景が切り取って語られる。スウェーデンの森の中、王の墓のお話が良かったかな。ロマンチックな一冊でした。(☆☆☆)

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荒川弘: 百姓貴族 (ウィングス・コミックス)

北海道で農業をやっていた頃の思い出話、エッセイ漫画。
どの話も軽いノリとギャグで、とても楽しく読めた。農業高校の様子は、面白かったなあ。

また、規格外品の初乳で牛乳豆腐を作る、なんてことも全く知らなかった。大量の農業生産品の影には、捨てられるだけのまだ食べられるものがたくさんあるんだろうなあ。
サラリと楽しく読める一冊だけど、農業を考える人にも読んで欲しい。おすすめ。(☆☆☆☆)

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堀博美: きのこる キノコLOVE111

キノコのよもやま話を、ひたすら語ってくださる本。
きのこの種別、キノコにまつわる文学・音楽・アート、日本人ときのこの歴史、可愛いキノコグッズ、などなどひたすらキノコ愛にあふれている。

音楽の項で、「日本の現代の音楽できのこ、といって、まず思いつくのは、筋肉少女帯のアルバム『SISTER STRAWBERRY』収録「キノコパワー」ではないでしょうか」といきなり書かれていてビックリした。ほほう……この著者、なかなかやりよるわい……。
しかしキノコにまつわる文学はちょっと足りないかな。まずオールディス「地球の長い午後」を入れて欲しかった。あれこそ、アミガサタケに寄生されるというキノコ主役のSF小説。
キノコ漫画は、やはりつげ義春「初茸狩り」が要るかな。まぁキノコ自体は出てこないからいいのかな? あとキノコ小説では、北杜夫「楡家の人びと」に、キノコの人工栽培をしようとするお話が出ていますね。北杜夫本人がモデルだったっけか。

本文最初に書かれている通り、あまり学術的なことは書かれていない。しかしとても読みやすく、面白い本。キノコ好きにはオススメの一冊でした。(☆☆☆☆)

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碇義朗: 海軍航空予備学生―予備士官パイロットの生と死 (光人社NF文庫)

戦前に設置されていた学生航空連盟海洋部を母体とする学生海洋航空団(のちの海軍予備航空団)の学生たちを追ったドキュメント。
元来、陸軍支配から切り離すために海洋部を独立させたとのことなのだが、その後も訓練の際に海軍兵学校出身の者たちとの軋轢なども出てくる。この辺は制度やら縄張り争いやらメンツやらが複雑で、当時から今に続く「日本的な何か」を感じてしまった。
(飛行訓練を受ける際、予備学生は旧制高校卒などして入る一方、海軍兵学校出身者は艦隊経験者が飛行科に転属となってやってくる。軍歴は兵学校のものが長いが、予備学生の方が階級的には上となることもあり、同じ飛行学生でも現場の温度感などに違和感があったようだ)

本文は断片的な記述が多くて当時の予備知識が無いとなかなか読み解くのが難しいが、生々しい記述が多く戦時中の航空機乗りの様子が色々と垣間見られて興味深い。
変に思想的に煽るようなものもなく、淡々と語られており読みやすかった。(☆☆☆)

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小宮山勝司 (写真), 山田智子 (文): わかる!図鑑9 きのこ

コンパクトなミニ図鑑。
有名どころなきのこしか載っていないけど、写真は見やすく、料理例などもあってパラパラとめくっていても楽しい。

この本のきのこは、何故かどれも美味しそうに見えますね(☆☆☆)

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トマス・レソェ: 世界きのこ図鑑 (ネイチャー・ハンドブック)

ハンディサイズ(とは言ってもA5版でそれなりに大きい)のキノコ図鑑。
傘や柄の状態などキノコの見分け方がなかなか詳しく書かれており、写真も全体のデザインも見やすい。「世界の〜〜」と銘打ってる割には、日本のキノコも多く載っている。

なかなか分かりやすく、楽しい一冊でした。手頃でおすすめ。(☆☆☆☆)

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増補改訂新版 日本のきのこ (山溪カラー名鑑)

きのこの図鑑。8000円と高価で、しかもとても重いので持ち歩きはムリ。
全ての写真は自然で生えているままを掲載しており、種類も実に豊富。まさに日本のキノコ図鑑の決定版と言えよう。

気軽に買えるもんじゃないけど、図書館に行けば大抵置いてあるので手に取ってみたい一冊。(☆☆☆☆)

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吹春俊光 (文), 大作晃一 (写真): 見つけて楽しむきのこワンダーランド (森の休日 4)

原寸大のキノコ写真。図鑑というより読み物という感じで、パラパラとめくるだけでも楽しい。
サイズは大きいけど比較的薄めなので、なかなかお手軽なキノコ本でした。(☆☆☆☆)

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