とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
この「とりかへばや物語」、以前に講談社学術文庫の原文+現代語訳で少し読んだことはあるのだが、途中で挫折してしまった。
ということで、ダイジェスト版のこちらを読んでみた。
物語は平安時代、「権大納言」の子ども2人、男の子(若君)と女の子(姫君)のお話。二人ともとても美しく、人を惹きつける魅力があったのだが、問題はその性格。
若君は男の子なのにとても人見知りで、御頂台の中に籠もっては雛遊びなどばかりしている。一方、姫君はとてもおてんばな性格で、外で鞠や小弓で遊び、大人達がたくさんいる客間に乱入しては詩を吟じたり笛を吹いたりする。
二人の性格を「とりかへばや(取り替えたい)」……という父親の思いがタイトル。結局2人は性別を偽り、若君は女として、姫君は男として宮中に仕えることとなり、そこから様々な事件が起きていく……。
いやー、これは面白かった! 12世紀に書かれたとはとても思えないような現代的テーマと、登場人物達の心の動き・悩みの描き方が本当に素晴らしい。また、冒頭に若君が、人見知りで恥ずかしくて几帳に絡まるように身を隠すのを、
「さらぬ女房などの御前へも参れば、御几帳にまつはれて、恥づかしいみじとのみ思したる」
とは、なんという生き生きとした描写だろう。もはや、21世紀の秋葉原に萌え本として並んでいても良いレベル。
2012年にもなった現在でも、そっくりそのまま掲載されて大人気になってもおかしくないな。傑作でしたわあ。(☆☆☆☆☆)
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