« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »

2010年10月

斉藤喜彦, 伊藤正時: 結晶の話 (化学の話シリーズ (7))

結晶について様々な学者のエピソードを交えつつ、色々と語ってくださる固体物理学入門書。

本来は高校生向けということもあり、難易度的にもその辺。イオン結合や単位格子など一つ一つの概念が、感覚的にかつ論理的に分かりやすく書かれていてなかなか良かった。
ページも少なめでサラリと読めるので、高校生だけでなく一般の方も是非。(☆☆☆)

| | コメント (0)

津江保彦「物理でほっと―コーヒータイムの5つの物理」

図書館で目に付いたので借りてみた。著者は原子核理論系の先生らしいけど、この本は一般の人向けに書かれているので高校数学くらいの知識があれば十分理解できる。

本は薄いけど、内容はなかなか面白い話がみっちりしていて読み応えがあった。白色矮星の質量を求める辺りで、「そうか、理論系の人たちはこういう考えをするのかぁ〜」とちょっと目ウロコだった(私は昔は実験系の院生だったので)。
磁気単極子が存在すると仮定すれば、角運動量の量子化の要請から、素電荷の存在が理論的に証明される……というくだりも「ほぉぉ〜〜」とうなってしまった。ディラックはそんなこと言ってたのかぁ、全然知らなかった。この議論、物理系の学部生でもやろうと思えば十分考えつくよねぇ。これが天才の考えなんだなぁ。「div B = 0 だからモノポール無いじゃん」で終わらせていた私とは大違いだ。

まぁそんなわけで、ちょっと物理に興味ある人から、昔物理をやっていた人まで幅広くオススメです。薄い本なのですぐ読めるしね(☆☆☆☆☆)

| | コメント (0)

大田区立郷土博物館: 工場まちの探検ガイド

これは大田区立郷土博物館の特別展図録なので、一般には販売されてない。
大田区立図書館にあったので借りてみた。

大田区の工場街にスポットを当ててその歴史を探っていくのだけど、これがなかなか面白かった。戦時中の写真など、結構よそでは見られない面白い写真が多い。セガ・エンタープライゼス(今のSEGA)の開発風景など興味引かれる写真もある。今でも買えるなら一冊欲しいな。
ただ、誤字脱字の多さには閉口。もうちょっとちゃんと校正して欲しかった、一回読んだだけで気が付くような派手な誤植が多すぎ。(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

松尾信之: 零細起業―謎の職業「猫の手、貸します」

会社を退職して便利屋を始めた著者の体験記という感じ。
書評では評価良かったみたいだけど、ぜんぜん面白くなかった。特に後半の、いかにも団塊世代っぽい語りにはちとうんざり。買わないで図書館で借りて良かったわ。(☆)

| | コメント (0)

椎名誠: でか足国探検記 (新潮文庫)

シーナさんの、チリ・アルゼンチン探検記。しかしどうもパワー不足かつ面白さ不足で、あまり楽しめなかった。
あやしい探検隊シリーズとするには、どうも椎名さん以外の登場人物の影が薄い。探検記として読むにしても「行ってみたい!!」と思う場面が少なくいまいちだったなぁ。(☆☆☆)

| | コメント (0)

福本伸行: 賭博黙示録カイジ (ヤンマガKC (608))

前から断片的に読んではいたのだが、全13巻を大人買いしたのでようやく読了。
今さら私が語ることではなかろうが、これはやはり傑作である。単にギャンブル漫画としても心理戦の奥深さをこれでもかと描いてくれる面白さがあるのだが、さらにその枠にとどまらずに人間の心とは何か、というところまで突き詰めてくれる実に素晴らしい作品。

ただ、最後の会長との決戦だけは、あまりに手抜きではなかろうか。そこまでがあまりに綿密に組み立てられた素晴らしいストーリーだったばかりに、このイカサマのやっつけっぷりは拍子抜けでちょっとガッカリ。息切れしてしまったのかなぁ。
しかし考えてみれば、この漫画で出てきたゲームは限定ジャンケン・鉄骨渡り・Eカード・ティッシュくじの4つしかない。それだけでよくもここまで描けたものだ。すごい (☆☆☆☆☆)

| | コメント (0)

林亮介: 迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

会社のfalz先輩のお知り合いが書かれていると聞いて、さっそく買ってみた。京都に突如出現したダンジョンに潜ってモンスターを狩る者達の群像劇。ちょっとPBMっぽい感じもするなぁ。
いかにもライトノベルっぽい雰囲気だったので、買った後で最初数ページをパラパラと見て「失敗したかなぁ……つまんなそう」と思ったのだが、意外に意外、なかなか面白かった。

内容は、これはもうはっきりと「現代日本版Wizardry」である。地上の酒場で仲間集めとか宝箱(とはちょっと違うけど)の罠とか死体回収に別パーティが行くとか、そこかしこに感じられるWiz臭がオールドゲーマーな我々にはとても心地よい。そこでの現代日本社会に生きる主人公達の行動は、まさに隣り合わせの灰と青春。
筆者も決してWizが元ネタということを隠そうとせず、Vorpal Bunnyを普通に登場させてるしね(笑。タカ派・ハト派というのも、Good/Evilから取られているわけですな。

まぁそんなわけで、オールドゲーマーでかつて夜な夜なダンジョンに潜っていた奴らは楽しめるから是非読むべし。
でも、ウィザードリィやったことない最近の若い子が、この本読んで楽しめるんだろうか? と逆に心配になってしまった。(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

上原ゼンジ: カメラプラス―トイカメラ風味の写真が簡単に

トイカメラ風の写真を撮るために、ちょっとした工夫で出来上がるレンズやフィルターの紹介をしてくださる。
面白い雰囲気の本なんだけど、実際にレンズを工作したい方には、同じ作者のデジカメでトイカメ!! キッチュレンズ工房の方が良い。細かい作り方が載っているので。(☆☆☆)

| | コメント (0)

椎名誠: 黄金時代 (文春文庫)

椎名誠の自伝的小説。
中学から高校までケンカに明け暮れていた時代から、写真学校入学直後までの自伝的小説。

私が一番知りたかった、なぜ写真大学に入ろうとしたのか……が全く語られていなかったのでちょっと拍子抜け。唐突な記述をぶつけてくる感じのちょっと不思議な青春小説だけど、なかなか面白かった。
でも、「岳物語」や「銀座のカラス」などの傑作と比べると、イマイチ感は否定できないかな。(☆☆☆)

| | コメント (0)

妹尾河童: 河童が覗いたヨーロッパ (新潮文庫)

ヨーロッパ旅行絵日記。泊まったホテルの紹介が延々と続くだけ……なのだが、それがなかなか面白い。
乗った鉄道の車掌さんのスケッチも良かった。私も旅に出たいなぁ。

アメリカで1$が340円の記述があって、時代を感じてしまった。物心ついた時には既に1$=120円くらいだった私には、そんな時代があったなんて信じられん……。(☆☆☆)

| | コメント (2)

上原ゼンジ: デジカメでトイカメ!! キッチュレンズ工房

ちょっと(いや、かなり)チープなレンズを手作りして、トイカメラっぽい写真を撮ってみよう!という本。
どの記事も楽しく読めて、しかも作っているレンズもとても個性的な写真が撮れているのにびっくり。面白い本でした(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

ジェイムズ・P・ホーガン: 星を継ぐもの (創元SF文庫)

名作だと言われていたので前から読もう読もうと思っていたのだけど、ようやく読了。いやー、これは面白かった!

月面上で宇宙服を身につけた人間の遺体が発見される、しかし調べてみると彼は死後5万年を経過していることが分かった……という事件から始まるハードSF。
でも、ハードという言葉にあまり身を引く必要はない。単純に謎を解き明かすミステリとしても十分読める。

キモとなるトリックは途中で分かってしまったんだけど、それでも最後の怒濤の展開にはすっかり魅了。いやはや、面白いSFでした。続編もあるらしい、読まねば。(☆☆☆☆☆)

| | コメント (0)

サイモン・ウィルソン: シュルレアリスムの絵画 (アート・ライブラリー)

大型本なので図書館で借りてきた。
ちょっと印刷の色が微妙な気もするけど、やはり画集はこのくらいの大きさが一番いいな。それなりに手軽で、それなりに大きくて楽しめる。

この本でドロテア・タニングという画家を初めて知ったのだけど(実はエルンストの妻なんだそうな)、収録されている、大きなヒマワリの花が屋敷内に横たわる絵「"アイネ・クライネ・ナハトムジーク"」にちょっと衝撃。これはいいなぁ。(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

ポール・グレアム: ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち

どこぞで紹介されていたので図書館で借りてきた。これは面白い!
ハッカーとビジネスの関わりなどを、軽快にかつ思慮深く語ってくださる本。

Lisp至上主義な点がちと鼻についたり、最初の方の記事は2003年頃のものなので古さが目につくけど、それ以外はとても楽しく読めた。
ただ、格差の章についてはちょっと納得できないな。そりゃ市場経済が的確に働いている社会ならそれで良いんだけど、日本みたいに既得権益がガチガチな国ではそうそう話は上手く行かないよ。(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

伊坂幸太郎: 重力ピエロ

hompo氏から借りて読んでみた。
連続放火事件に隠されたメッセージを解き明かす、ミステリ風味のお話。兄弟愛・家族愛と、犯罪がテーマなのかな。

文章は読みやすく内容もなかなか面白かったけど、ミステリ部分は序盤からあまりにバレバレでちとどうかと。それと、この作者は同じモチーフの他作品への使い回しが多いなぁ。それが味なんだろうけど。
まあフツーに面白かったです。(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

ヤマザキマリ: テルマエ・ロマエ II (BEAM COMIX)

古代ローマ技師が現代日本にタイムスリップし、浴場改装を繰り広げるシリーズ第2弾。
なかなか面白かったけど、うーん、1巻に比べると既にマンネリ感が出てきて、もうそろそろネタも限界なんじゃないか……パワー不足は否めない。ムリせず、次の3巻で終わりにしておいた方がいいんじゃないかなぁ。(☆☆☆)

| | コメント (0)

伊坂幸太郎: 魔王

普段の日常生活に徐々に忍び込むファシズムを描いた小説。
インターネットに対する描写とか「能力」などが、別作品の「モダンタイムス」にひどく似ているなぁと思ったら、これの続編がモダンタイムスという扱いらしい。へぇ。

なかなか面白い本だったけど、やはり村上龍「愛と幻想のファシズム」に比べるとあまりに弱いなぁ……という感想。(☆☆☆☆)

| | コメント (0)

伊坂幸太郎: 終末のフール

伊坂ファンの友人から借りてきた。
小惑星が衝突し地球は滅亡するという予告がされた後、人々はどう終末を迎えるか? という連作短編集。

内容はネビル・シュート「渚にて」の現代日本版という感じで、正直あまり目新しく感じる部分は無かった。そもそもこのテーマ自体が、SF界では手垢付きまくりの超古典的なものだしね……。
一番良かったのはジムで練習に励み続ける「鋼鉄のウール」かな。まぁ決してつまらなくは無い、なかなか面白い本だったけど、名作というにはちとほど遠いかなという感想。(☆☆☆)

| | コメント (0)

« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »