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尾崎紅葉: 金色夜叉

遙か昔に捕獲してたんだけど、ようやく読んだ。買って積んでおいてから、読もうと手に取るまで、7年近くかかったことになる。
ちなみに、「金色夜叉」「続金色夜叉」「続々金色夜叉」「新続金色夜叉」が収録されている。未完。

お話自体は今さら私が語るまでもないのだが、世間一般に言われているストーリーと、原書を実際に読んでみた内容は、微妙に食い違っているということを知った。
まず宮は、言われているほどお金に目がくらんでいるわけじゃない。そもそも、鴫沢家自体がそれなりの資産家だし。
貫一も、「夜叉」というほどの悪徳っぷりはほとんど見ることができない。なんか、単にいじけてひねくれてしまっただけのように感じてしまったのは私だけか。

名場面としては、やはり熱海で貫一がお宮を蹴り飛ばすシーンが傑作だ。著作権も切れているし、遠慮無く引用させて頂こう。


「吁、宮さんかうして二人が一処に居るのも今夜ぎりだ。お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜ぎり、僕がお前に物を言ふのも今夜ぎりだよ。一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。来年の今月今夜は、貫一は何処でこの月を見るのだか! 再来年の今月今夜……十年後の今月今夜……一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ! 可いか、宮さん、一月の十七日だ。来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇つたらば、宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ」

あと、「続金色夜叉」の、ナイフを奪い合って満江と宮が格闘するシーンも名場面だったなー。夢の中だけどなw
他にも、ビリヤードが普通に出てきたり、「白ける」という動詞が出てきたり、明治時代がとても身近に感じられる作品だった。想像していたような取っつきにくさは、ほとんど無かったよ。

まぁそんな感じで、やはり現代っ子には読みにくいけど、内容は決して色褪せずに素晴らしい傑作だと思ったよ。これ、ほとんど手直しせずに、現代でも読み物として通じるね。
ただまぁ、この小説は金貸しを完全に悪として扱っているので、サラ金業界に広告費をもらいまくっている今のマスゴミじゃ、とても取り上げることは出来ないんだろうね。

とまれ、傑作なので、一度は読んでみることをオススメします。
ただ、「続々」以降は蛇足だなー。「続」を夢オチにしないでちゃんとあれで終わらせていれば、間違いなく星5つなんだがな。(★★★★)


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