タニス リー: バイティング・ザ・サン
アトレヴィー(挨拶)。
まずこの本は、装丁がやたらと豪華! 美しい表紙と、カバーを剥がすと表れるミラー塗装……金かけてるなー! しかも定価はたったの1280円。産業図書、大丈夫か? 2000円でいいと思うんだけど
内容としては、未来の理想郷(ユートピア)に住む人々を描いた、古典的SFの雰囲気漂う小説。シェルター状の建物の中で疑似型ロボットに囲まれ、過度の安全環境下で暮らす人々は、催眠学習期間とジャングと呼ばれる若者(?)の期間、そして大人の期間の3つを過ごす。物語は主にこのジャングにスポットを当てるわけだが、そこで使われる「アトレヴィー」「デリサン」「ウーマ」などのジャング語が非常に心地よい。
主人公の女の子(この世界では性別も簡単に変更できるのであまり意味は無いが……)はそこで悩み、怒り、笑い、そして成長していくわけだが、彼女を取り囲む友人・知人は一癖もフタ癖もあるものばかり。自殺癖の強いハーゲル、好きになって欲しいのに化け物じみた格好ばかりするハッタ、主人公の運命を激しく狂わせるザークなど……。
発行年をよく見たら、1970年代に書かれているので随分と昔やね。何故に今頃、復刊されたのだろうか……。
本書はその頃からSFに慣れ親しんでいたSF玄人には物足りないのだろうけど、「ニューロマンサー」からSFに足をつっこんだ最近の若い人(私含む)にはむしろその感覚が新鮮・斬新! 初めの方は感覚を掴むのに苦労したものの、それからは怒濤の勢いで読んでしまった。ただ、後半の砂漠はちょっとダレるけどね……ラストシーンが少々拍子抜けなのも残念。
それでも、私の中でベストSFであることは確定。デリサン!!(★★★★★)
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